ECの限界利益の計算方法|商品別採算と広告・値引きの判断

この記事で分かること
- 限界利益・粗利・固定費を引いた利益の違い
- 商品原価、送料、手数料などを商品別に整理する方法
- 値引きと広告予算を、月末の利益見込みにつなげる計算例
「売上は増えたのに利益が残らない」「もう少し広告やポイントに使ってよいか分からない」。ECの採算を見直すなら、まず商品1個が売れたときに増える費用と、販売数にかかわらず発生する費用を分けましょう。
限界利益は売上から変動費を引いた金額で、固定費を回収するための原資です。この金額を商品別に把握し、月間の販売数と固定費を組み合わせると、追加施策を行った後の利益を見通しやすくなります。
本記事は、ECグロースチャンネルの2026年10月15日公開動画をもとに、商品別の採算管理を解説します。動画が扱う「費用を把握して投資余力を判断する」という実務上の論点を整理し、会計用語の定義は中小機構の公式情報で補足しています。計算例・管理表・チェックリストは編集部作成です。情報確認日:2026年10月20日。
本記事は、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Qoo10などのECモール支援を手がける株式会社Wacworksの代表取締役社長 舟瀬 悠が監修しています。また、当サイトのコンテンツは、株式会社Wacworksが定める「コンテンツ制作・編集ポリシー」に基づいて制作しています。
目次
ECの限界利益とは?粗利や固定費控除後の利益と分けて考える
限界利益の基本式は「売上高 − 変動費」です。限界利益率は「限界利益 ÷ 売上高 × 100」で求めます。売上がゼロの場合、率は計算できません。中小機構のJ-Net21でも、売上と変動費の差額を限界利益とし、固定費の回収に貢献する利益と説明しています。出典:J-Net21「損益分岐点の計算方法と活用方法」。
粗利(売上総利益)は売上高から売上原価を引く指標です。販売手数料や発送費などをどの科目で処理しているかによって、管理表の数字との対応は変わります。粗利と限界利益を同じ意味で使わず、差し引く費用を明記してください。
動画を見る際の用語の補足
- 動画では家賃や人件費まで含め、広い範囲の費用を差し引いた採算について説明しています。
- 一般的な定義では、固定費を差し引く前が限界利益です。本記事では、固定費を差し引いた後の利益と区別します。
- 商品原価・送料・梱包資材費は、販売量や出荷件数に応じて増える部分を変動費として整理します。
社内で独自の「商品利益」を使うこと自体は可能ですが、計算式が違う数字を限界利益率として比較すると判断がずれます。経営者、店舗担当者、広告担当者の間で、同じ名称に同じ計算式を使うことが出発点です。
商品別の費用を、変動費と固定費に分ける

動画では、仕入価格だけでなく輸送や倉庫保管、手続きにかかる時間も含め、商品を売るためのコストを可視化することを勧めています。見落としを防ぐには、請求書やモールの精算明細をもとに、費用を一度洗い出します。
次の表は編集部による分類の目安です。「毎回同じ単価だから固定費」とは限りません。1件600円の送料でも、出荷件数に応じて合計が増えるなら、その部分は変動費です。
| 費用の例 | 分類の目安 | 確認すること |
|---|---|---|
| 販売した商品の原価、出荷ごとの送料・梱包材 | 変動費 | 仕入時の輸送費などを原価に含めている場合は重複計上しない |
| 売上に応じた販売・決済手数料、店舗負担ポイント | 変動費 | 計算対象、負担者、精算明細との対応 |
| 月額の家賃、固定給、定額ツール費 | 固定費 | 対象期間と、その店舗・事業で負担する範囲 |
| 広告費、倉庫費、作業委託費 | 契約・発生条件に応じて分ける | 月額固定部分と、クリック・保管量・件数等で変わる部分 |
中小機構も、仕入費用や荷造運賃を変動費、売上と連動しない賃料などを固定費として整理し、人件費は支払条件によって分類が変わり得ると説明しています。出典:J-Net21「運転資金の考え方(小売業)」。
広告費は売上に自動で比例するとは限りません。販売数と連動しない月額予算として管理するのか、変動する費用として扱うのかを決め、別枠で差し引く場合は「広告費控除前」「広告費控除後」と表示します。どちらの場合も同じ費用を二度引かないことが大切です。
計算例|500円の値引きで、1個あたりの限界利益はどう変わる?
以下は編集部が作成した架空の例です。動画内の実績でも、特定モールの料金表でもありません。1注文につき商品1個、金額はすべて税抜、返品なしとし、手数料を販売価格の10%、店舗負担ポイントを2%と仮定します。広告費はこの表に含めず、次の月次計算で扱います。
| 項目 | 通常販売 | 500円値引き後 |
|---|---|---|
| 売上(値引き後の販売価格) | 5,000円 | 4,500円 |
| 商品原価 | 2,000円 | 2,000円 |
| 出荷送料 | 600円 | 600円 |
| 梱包資材費 | 100円 | 100円 |
| 販売・決済手数料(仮定10%) | 500円 | 450円 |
| 店舗負担ポイント(仮定2%) | 100円 | 90円 |
| 変動費合計 | 3,300円 | 3,240円 |
| 限界利益(広告費控除前) | 1,700円 | 1,260円 |
| 限界利益率(広告費控除前) | 34% | 28% |
この例では、500円の値引きで1個あたりの限界利益が440円減ります。価格に連動する費用も変わるため、値引き額と利益の減少額は同じではありません。売上高には値引き後の4,500円を使っているので、ここから500円をもう一度引く必要はありません。
実際の手数料・ポイント負担は、利用サービス、対象金額、契約、キャンペーンによって異なります。この仮定率をそのまま使わず、現在の契約と精算明細に置き換えてください。送料収入がある店舗は、その収入と発送費用の両方を整合する形で計上します。
商品別の限界利益を、月間の利益見込みにつなげる

動画の終盤では、商品ごとの利益計算と月末の着地予測を持つことで、追加の販促に踏み込めるか判断しやすくなると説明しています。商品別の計算を、月間の販売見込みにつなげてみましょう。
上の架空の商品が月100個売れ、広告予算が月4万円、その他の固定費が月10万円だとします。本例では広告予算は販売数に連動しない固定費として扱い、ほかの費用は発生しないものとします。
同じ100個を販売した場合の月次計算(編集部の仮定)
- 通常販売:1,700円 × 100個 − 広告費40,000円 − その他固定費100,000円 = 30,000円
- 値引き後:1,260円 × 100個 − 広告費40,000円 − その他固定費100,000円 = −14,000円
- この差を埋めるには、販売数の増加、費用の見直し、価格条件の変更などを検討する必要があります。
同じ費用条件なら、値引き後に月3万円を残すために必要な販売数は「(140,000円 + 30,000円)÷ 1,260円」を切り上げた135個です。通常の100個に対して35個多く売れる見込みがあるかを検討します。これは条件を固定した試算であり、値引きによる販売増加を保証するものではありません。
1個あたりの限界利益がプラスでも、月間の固定費を回収できなければ赤字になります。複数商品がある場合は、商品ごとの「1個あたりの限界利益 × 販売数」を合計してから、共通の固定費を差し引きます。固定費を商品別にも配賦する場合は、その合計を再度引かないようにしてください。
月次の利益と口座の現金残高も異なります。在庫の仕入れ、モールからの入金、各費用の支払いには時差があるため、追加予算を決めるときは支払予定も別に確認します。
広告・ポイント施策を増やす前に、商品別管理表をそろえる
動画では、追加施策が値引きやポイントに偏りやすいため、守りたい利益の水準を先に決めることを勧めています。実務では、担当者が次の項目を同じ表で確認できるようにすると判断しやすくなります。以下は編集部の管理表案です。
| 管理項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 商品・販売条件 | SKU、モール、対象期間、価格、送料条件 |
| 変動費の内訳 | 販売原価、出荷費、手数料、店舗負担ポイント等 |
| 商品別の限界利益 | 1個あたり金額と率、広告費を含めるか |
| 月間の見込み | 商品ごとの販売数、広告予算、その他固定費 |
| 施策の判断条件 | 追加費用、残したい利益、販売数が下振れした場合の見込み |
| 管理担当 | 数値の出所、更新日、確認担当者、次回の見直し日 |
最初は主力商品の数SKUから始め、返品・キャンセルや配送条件による差も段階的に反映します。概算を使う項目は概算と分かるようにし、月が締まったら実績の精算明細と照合しましょう。想定より費用が大きかった項目を次の計算へ戻すことで、判断の精度を上げられます。
運用開始前のチェックリスト
- 税込・税抜、対象期間、売上計上の基準をそろえた
- 値引き、原価に含めた輸送費、広告費を二重に引いていない
- 固定費と変動費を、単価ではなく発生条件から分類した
- 手数料とポイントを実際の契約・精算明細で確認した
- 販売数が予想を下回る場合も月次の利益を試算した
- 利益見込みに加えて、入金・支払予定を確認した
計算した数字を広告運用の改善に使う方法は、EC広告レポートの作り方と利益判断のポイントをご覧ください。セールに参加する範囲や販売目的から整理したい場合は、ECモールのセール参加を判断するポイントが参考になります。
元動画で商品別の採算管理の考え方を見る
出典:ECグロースチャンネル「【事業者必見】売上が伸びても儲からないEC店舗へ『限界利益(率)』の考え方を解説します【ECコンサル】」(2026年10月15日公開)。場面画像は元動画から引用しています。用語の定義については、本記事冒頭の補足と公式出典を併せてご確認ください。
まとめ|商品ごとの費用と、月末に残る利益をつなげる
ECの限界利益は、商品別の売上から変動費を引いて求めます。その金額に販売数を掛け、固定費や別枠で管理する広告費を差し引くことで、店舗全体の利益見込みにつながります。値引きや追加広告の前に費用の範囲をそろえ、施策後も残したい利益から逆算しましょう。
商品ごとの改善優先度や店舗運営の見直しは、WacworksのECサポートサービスでもご相談いただけます。
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